物騒なニュース

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物騒なニュース

 今日は待ちに待った日曜日。  僕にとっては最高の日だ。  カーテンのすき間からは穏やかな、ぽかぽかとした日差しが差し込む。  その中で僕は優雅にコーヒーをすすっていた。  僕は佐伯幹人(さえきみきと)、入社八年目のごくごく普通なサラリーマンだ。  そんな僕には恥ずかしながら恋人がいる。 「はいはーい、今日はふわっふわのパンケーキだよ」  そういうと、彼女は本当にふわふわのパンケーキを僕の前に置く。  僕はそのパンケーキを一口サイズに切ると、ぱくりとほおばった。 「うん、美味しい。取子は本当に料理が上手だね」 「そうかな? 今日はお菓子屋さんのパンケーキミックスで作ってみたんだぁ。本当にふわふわになったし、買ってみてよかった」  彼女は満面の笑みで笑って見せた。  彼女は北条取子(ほうじょうとりこ)、僕の彼女だ。  僕たちはちょうど三年前から付き合い始めていて現在は一緒に住むという、いわゆる同棲をしている。  取子は料理が上手でいつもフレンチ料理店のような盛り付けをしてくれる、もちろん味も美味しい。  僕の自慢の彼女だ――。 『続いてのニュースです。現在、X市で殺人犯が逃走しています。犯人は黒のワンピースを着ていてサングラスで目を隠している女性です。繰り返し……』  つけていたテレビから不穏なニュースが流れる。 「あぁもう、朝から物騒だな」 「仕方ないわよ、こういう人がいる限り悪いニュースは消えないからね」  僕の言葉に取子は悲しそうな顔を声で名言的なことを言った。 「ねぇ、今日は付き合い始めてから三周年だけど。どこに行く?」  そう、今日で僕と取子は付き合い始めてから三周年。  今日はその記念のデートをする約束をしていた。 「うーん、取子はそこ行きたいか?」 「ショッピングモールに行きたいかなぁ。この前、隣町にできたショッピングモールがあるからそこに行きたいなぁ、あとそこで外食するのもいいかも」 「わかった、そこに行こうか」 「うん、私のわがままを聞いてくれてありがとうね」 「あぁ、もちろんさ」  僕は取子に向かって二カッと笑った。
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