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「あ、ほら、あの子だよ」
ひそひそ声が、隣から聞こえた。彼女の姿が、図書室の入口をくぐってから、ほんの数秒後のことだ。
二人の女子が、少し離れた斜め前のテーブルに、並んで座っている。そのうちのひとりが、口元を覆い隠しながら、こそこそと噂をする調子でそう言ったのだ。
「えっ、なになに。なんのこと?」
「――って、クミコ、あの噂知らないの?」
「えー、なにそれ」
「おっくれてるー」
「もう、教えてよー」
「魔女って言われてる女の子」
彼女たちは、好奇心をだだ漏らしにしながらも、それっきり口を閉ざした。視線だけが、ついさっき図書室に入ってきた異分子を追っている。
その異分子の女の子は、僕が座っている席へと近づいてきた。魔女と呼ばれた彼女は、僕の隣の席に、流れるような優雅な動作で腰かけた。
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