魔女と僕のプロローグ

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 僕はというと、どこか冷めた気持ちで、そんな魔女伝説と向き合っている。彩瀬さんがそういう特殊能力めいたものを持っているなんて、これっぽっちも思っていない。  だから、さっきみたいな、陰口にも似たひそひそ話には、なるべく加わりたくない。同級生たちが面白おかしく騒ぐと、表面的には興味を示したふりをするけど、内心では距離を置くようにしていた。これからも、たぶんそう。  いくら周囲が彩瀬さんを魔女だと疑おうと信じないし、他の女の子の誰かに魔女の嫌疑がかけられても、賛同はするつもりもない。  理由なく拒絶することも。  だって、それは卑怯だから――。周囲から聞いた印象だけで他人の人格を決めつけるなんて。  強い意思を持った人間になりたい。小学六年生のときのあるきっかけから、僕はそう心に決めている。ほんの小さな出来事が原因で、取り返しのつかない不幸に陥る子だっているんだ――。
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