6人が本棚に入れています
本棚に追加
惨めな気持ちのまま当てもなく、泣く場所を求めて彷徨っていると、ふと鳥居が見えた。
泣くまいと表情筋に改めて力を込め、一礼して鳥居をくぐる。
無礼を謝りながら、境内へ続く階段を駆け上がる。途中で涙が一粒落ちてきた。
我慢出来なくなって、踊り場のようなところでうずくまる様に座り込んだ。
大人になってからこんなに泣いたことはあっただろうか。
「……ふぇええん、ふっ……くっ、ぐすっ」
私は彼とのことを思い出していた。
彼とは学生時代からの付き合いだが、互いの仕事が忙しくなり、会う回数は減っていた。
昨年、彼からプロポーズされた後も、会えない日々が続いた。
それでも、結婚資金を貯めるためにも頑張った。彼の事が本当に好きだったから。
それがこの裏切りだ。
「――ぐすっ、私、もう人を好きになれる自信ない。このまま結婚できなかったらどうしよう……」
1人寂しく孤独死する未来を想像して背筋がぞっとした。そんな時だった。
最初のコメントを投稿しよう!