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カラスがカアカア言いながら笑っている。
驚きすぎて、涙はいつの間にか止まっていた。
「あ! いた!」
ふと女性の声が聞こえ、直後にバタバタと石の階段をかけ上がる音が聞こえた。
「流石! やたちゃんナイス!!」
「ん? よう、紬じゃねえか」
カラスの知り合いらしい女性は、綺麗な黒髪をローポニーに結わえた、いかにも大和撫子といった清廉な美人だった。
彼女はカラスに親指を立ててみせると、私を見て言った。
「私は渡瀬紬と言います。この神社の娘です。実は先ほど、カフェに居て、その」
「見ていらっしゃったんですね。お恥ずかしいところをお見せしました」
「いえ! こう言ってはなんですが、あんな身勝手な馬鹿男は別れて正解ですよ!!! 私なら後5発は殴ってます」
握りこぶしを作って殴るフリをし始めた渡瀬さんが面白くて、思わず笑いが漏れる。
「ふふっ、ありがとうございます」
「貴女にはもっと素敵な運命の方が居ますよ! ささっ。詳しい話は部屋でしましょう?」
「え、ええ?」
手を繋がれて、引っ張られる。
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