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話し相手になってくれたカラスを忘れていたので、慌てて振り返った。
「あ、カラスさん。ありがとうございました!」
「おう。なんかあったらいつでも来いよ」
渡瀬さんに連れられて着いたのは、神様の祀られた区域とは反対側の建物だった。
「どうぞ上がってください」
「あ、ありがとうございます」
玄関は、日本家屋特有の檜の柱や畳のい草、何とも言えない懐かしい香りが漂う。
「どうぞ。こちらの部屋です」
「あれ、紬? お客様か?」
「お兄ちゃん!! 丁度良いところに!」
長い廊下にはいくつか部屋があり、その内の一室に通される。
別の部屋からスーツ姿の垂れ目で穏やかそうな感じのイケメンが出てきた。
渡瀬さんのお兄さんらしい男性は私が居ることに驚いたようだが、すぐに優しく笑って会釈をしてくれた。
「お兄ちゃん! 例のシステムの体験者は私が決めて良いって言ってたよね! 私、この人を推薦したい」
「「え?」」
システム? 何の事?
思い当ったらしいお兄さんが、少し考えた様子で私の方へ歩いて来て言った。
「とりあえず座ろうか。紬、お茶持っておいで」
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