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和室は10畳ほどの広さで床の間には菖蒲と掛け軸が飾られている。
部屋の中央に四角いちゃぶ台、お兄さんに薦められるまま座布団に腰を下ろした。
お兄さんが正面に座り、渡瀬さんがお茶と豆大福を持って戻って来た。
お茶を一口飲んだお兄さんが口を開く。
「さて、自己紹介がまだでしたね。私は紬の兄で渡瀬渉と申します。私は政府の少子化対策を専門とする部署に勤めています。貴女の名前を伺っても宜しいですか? 紬と会われた経緯も一緒に」
「あ、そう言えば私も聞いてなかった!! お名前教えてください!」
「紬……はぁ」
「すみません。名乗って頂いたのに、こちらは名乗りもせず。私は川西美和子といいます」
私はここまでのあらましを2人に話した。
冷静に話したつもりだが、時々涙声が混ざったのは仕方ないと思う。
紬さんが優しく声をかけてくれた。
「美和子さん、そんな事があったんですね。私はあの時カフェに居て、美和子さんが平手打ちしたのを見ました。美和子さんが気になって、後を追いかけたんです。貴女はあの男には勿体ない! もっと素敵な人がいますよ!」
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