1.ある平凡なアルファ

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 王都のエリートが集まる学園の高等部。  無事に特待生として合格した結果、学費に加えて寮費も必要ないという現金な決め手により、俺はこの学園に入学した。  噂の通り、この学園の生徒は王族や貴族、王都に住む商人の子息などが多くを占めていた。  彼らは初等部からここに通っているため、ここ高等部では言わずもがな、既に目に見えない派閥や上下関係のようなものは出来上がっているようだ。  庶民の俺としては貴族の人脈も必要ないし、お互いの腹を探り合う友人付き合いなど御免被りたい。  生徒の中には上位クラスのαだという者も複数おり(さすが王都だな)、彼らの発言力や影響力は非常に強く、それぞれの派閥の主要人物であるのは一目瞭然だ。  彼らの怒りを買った者は、保健室に行ったきり戻らずそのまま学園を去っていくなんて噂も聞こえてきた。  だから嫌だって俺言ったよね!?と心の中で叫んでももう遅い。  大体、上位クラスのαだと言われたところで俺にとってはそれを感知できないのだからたちが悪い。  知らずに余計なことをやらかす前に、極力関わらないようにしよう……。  早々にそう決意した俺は、「教室の隅で静かに勉強か読書をしている地味な学生」という地位を手に入れることに成功した。  最初は物珍しく、派閥の勧誘と称して絡まれることもまあなくはなかった。  それでもできるだけ丁寧な対応を心掛けてお断りすると、宇宙人でも見るかのような顔で去っていったきり絡んでくることはなかった。  最初はどうなることかと思ったが、怖い人に目を付けられることもなかったし、俺は平穏な学園生活を送ることができそうだ。  平和なことはいいことだ。
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