〔1〕Can't remember It.

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 七年前、十八歳。華の女子高生を終えようとしていた頃。初めて失恋をした春の夜。  泣き腫らしたまま帰れないでいた茅乃は、隣の家に住む小さな少年に、一輪の小さな花を差し出された。綿毛のついたタンポポだった。  ──『俺が好きだよ』  その告白を受けて、ああ……そうだ。目線を重ねながらタンポポに息を吹きかけて、綿毛を遠くへ飛ばした。  彼の告白は同じくらい儚いものだと思っていたし、時間と成長という風にすぐ飛ばされてしまうものだと確信していた。だからこそ、過去の私は例の台詞を吐いたのだろう。  ……しかし、いくら眼中になかったとはいえ、随分と上から目線じゃないか。女子高生よ。 「なんで今?」 「よかった。思い出したんだ」 「……もう、二十五だけどね」  キメの細かい肌から視線を逸らして、わざとらしくふて腐れる。 「だからだよ」  それでも、現役高校生はお構いなしに続けた。 「俺が十七になってから、一番〝差〟がつくのは今日だよ。茅ちゃん」  四月六日生まれ、牡羊座の霞。言われてみれば、しっかり〝八コ差〟である期間は短いのだと今更気がつく。歳を重ねても、毎年毎年しつこいくらいに追いつこうとしてくるんだ。(当たり前だけど) 「だから改めて言うよ」 「……この体勢、もう疲れた」 「いくら離れてたって、好きだよ。まだ」  無視をするならちゃんとしてよ。  心の内で悪態をつきながら、茅乃は胸を鳴らした。疲れた体勢を庇うように腰に回された大きな手と、胸に引き寄せる力強さが、自分とは違う七年を物語っている気がしたから。
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