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〔0〕Attention, please.
「茅ちゃんがしたいって言うまで、俺、手出さないよ」
——だから、付き合って。
紡がれた言葉に違和感を覚えるのは、自分が色恋に疎いからか、それとも、自嘲的に歳を重ねてきたせいか。
蛍光灯を反射する黒縁メガネと瑞々しいその肌に、茅乃はゆっくり眉をひそめた。
「知らないよ。青春棒に振っても」
たぶん、このときから。私の甘い悪夢は始まっていたのだろう。
「俺の春は、青くなくていい」
目の前の喉仏が不自然に揺れた、このときから。
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