第8話

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翌日は文化祭の振替休日だったので、間中くんと顔を合わせたのは火曜日の朝だった。 その間、私の頭のなかは彼のことでいっぱいだった。 落ち込んでいないかな。 やけくそになっていないかな。 「やっぱり告白しなければよかった」って思っていないかな。 なのに、2日ぶりに会った間中くんはびっくりするほど普段どおりだった。 「マナ〜、決勝残念だったなぁ」 背中にのしかかってくる山岸くんに、「やめろぉっ」って耳をふさいで抗議したりして。 「その話題ダメ! 傷口えぐるな!」 「なに言ってんだよ、準優勝もすごいじゃん」 「そうだよ、すごいよ、マナ。シュート決められなかったとしてもさ」 「やめて! お前ら、ほんとやめて!」 そっか、決勝戦負けたのか。 しかもシュートを決められなかったのか。 それは、めちゃくちゃ落ち込むだろうな。 (で、とどめが「失恋」──と) でも、そっちはそんなに落ち込んでいないみたい。 ずっと心配していた身としては、なんだか拍子抜けしてしまった。 (面白そうな小説、持ってきたのにな) 男子でも楽しめそうな冒険小説。こういうのを読むと、失恋の悲しみがまぎれるんじゃないかって。 でも、必要なかったみたい。間中くんが落ち込んでいるの、サッカーのことだけみたいだし。 それが誤解だってわかったのは、昼休みになってからだった。 「なあ、マナいる?」 たまにうちのクラスに顔を出すサッカー部の子が、西原くんに声をかけている。けれども、肝心の間中くんの姿はどこにもない。 「あいつ、給食を食い終わるといつもいなくなるんだよなぁ」 「え、マジで?」 「マジで。いつもどこに行ってんだろう」 「いつも」の行き先なら、書庫だ。理由は、私と作戦会議をするため。 でも、今日は違う。会議の約束はしていない。 なのに、間中くんはどこかへ行ってしまった。 (まさか……) なんだか胸がザワザワした。 予習のために開いていた数学の教科書を閉じると、私は教室を抜け出した。
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