第8話

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まず、訪れたのは書庫だ。 作戦会議の予定はなかったけれど、念のため。もちろん鍵はないから、いるとしたらドアの前でたたずんでいるはず。 けど、間中くんの姿はなかった。 ついでに図書室にも顔を出してみたけど、当然そこにも間中くんはいなかった。 となると、だ。 (間中くんの行きそうなところ──) 他の教室、トイレ、グラウンド、体育館──もしや、先生から呼び出しをくらって職員室、とか? そこまで考えたところで、ふと思い出したことがあった。 一時期、間中くんを避けていたときに連れていかれた場所。 (屋上の、階段のところ……!) すぐさま階段を駆け下りると、渡り廊下を抜け、中央階段に向かった。 当然だけど、階段を駆け下りるのに比べて駆け上がるのはめちゃくちゃキツい。それでも足を止められなかったのは、前へ前へと向かう想いがあったからだ。 (きっといる……絶対いる……) 間中くんは、そこにひとりでいるはず。 ようやく中央階段3階の踊り場までたどり着いた。 ガクガクと震える足腰を支えるように、私は手すりにしがみついた。 「……佐島?」 声は、頭上から降ってきた。 ゆっくり顔をあげると、屋上の手前──階段の上から2段目のところに間中くんは腰を下ろしていた。 「なんで? なんで佐島がここにいるの?」 私は、答えるかわりに階段をのぼった。 あいかわらず足がガクガクしたままだったから、一段ずつゆっくりと。 「佐島……」 なにか言いかけた間中くんに軽く手をあげて、私は隣に腰を下ろした。 「報告……」 「えっ?」 「報告して……後夜祭の……」 間中くんは迷うような顔を見せたあと、小さく「うん」とうなずいた。
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