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「うんと、ええと……結論から言うと池沢先輩にフラれた」
間中くんは、苦しげにこぼすとギュッと膝を抱え込んだ。
「池沢先輩、好きな人いるって。だから俺とは付き合えないって」
ああ、やっぱりそうか。
後夜祭のとき、結麻ちゃんが優先させたがっていたの、きっとその人からのお誘いだったんだろうな。
「……大丈夫?」
「なにが?」
「ええと……決勝戦もダメだったみたいだし。失恋も、したわけだし」
「ダメ。どっちも、思い出すだけで心臓が壊れそう」
悲しげな声は、教室でみんなと話していたときとは全然違う。
もしかして、あのときも無理していたのかな。みんなの悪気ない軽口に、間中くんなりに合わせようとしただけだったのかな。
「後悔、してる?」
結麻ちゃんに告白したこと。
やっぱり「もっと時間をかけたほうが良かった」とか思ってる?
間中くんは目を伏せたあと、小さく首を横に振った。
「後悔は、してない」
「本当に?」
「……ほんとは、ちょっとしてる」
だって、苦しい。すごく苦しい。
間中くんはそうこぼすと、そのまま膝に顔を埋めてしまった。
しばらくすると、すんって小さく鼻をすする音がした。
さらに、そのあと、すん……すんって何度も。
その間、私はただ隣に座っていた。どうすればいいのかわからなくて、膝の上の両手をジッと見つめることしかできなかった。
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