第8話

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「うんと、ええと……結論から言うと池沢先輩にフラれた」 間中くんは、苦しげにこぼすとギュッと膝を抱え込んだ。 「池沢先輩、好きな人いるって。だから俺とは付き合えないって」 ああ、やっぱりそうか。 後夜祭のとき、結麻ちゃんが優先させたがっていたの、きっとその人からのお誘いだったんだろうな。 「……大丈夫?」 「なにが?」 「ええと……決勝戦もダメだったみたいだし。失恋も、したわけだし」 「ダメ。どっちも、思い出すだけで心臓が壊れそう」 悲しげな声は、教室でみんなと話していたときとは全然違う。 もしかして、あのときも無理していたのかな。みんなの悪気ない軽口に、間中くんなりに合わせようとしただけだったのかな。 「後悔、してる?」 結麻ちゃんに告白したこと。 やっぱり「もっと時間をかけたほうが良かった」とか思ってる? 間中くんは目を伏せたあと、小さく首を横に振った。 「後悔は、してない」 「本当に?」 「……ほんとは、ちょっとしてる」 だって、苦しい。すごく苦しい。 間中くんはそうこぼすと、そのまま膝に顔を埋めてしまった。 しばらくすると、すんって小さく鼻をすする音がした。 さらに、そのあと、すん……すんって何度も。 その間、私はただ隣に座っていた。どうすればいいのかわからなくて、膝の上の両手をジッと見つめることしかできなかった。
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