夏、うるさくてしんどい。

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 翌日。  学校で俺は、竹林の傍に座る今池に声を掛けた。今池も竹林と同じく幼馴染である。 「なあ、今池。今度の合コン俺も入れてくれ」 「あぁ──って、え、はぁあ!?」  発された素っ頓狂な声と共に今池の椅子が後ろに倒れ掛けて──見事、生還した。 「死んだと思った」  胸に手を当て安堵する今池。  そう、今池、俺にはお前が必要だ。 「せめて来週の合コンを開いてから死んでくれ」 「なぁ、お前、熱でもあんのか?」  今池は、俺を心配そうに見上げた。  当然、熱などないが、今池が驚くのも無理はない。  俺は合コンの誘いを過去100パーセントで断っているのだから。 「お前がくるのは大歓迎、だ!」 「何故なら、上物が集まるからな」  絶妙なコンビネーションだ。竹林と今池が肩を組んで、慣れた手つきでクラス名簿を取り出す。     既に丸の付いたメンバーを訂正するのか塗り潰している。  いくら小1の時からの付き合いとはいえ、このテンションには付いていけない。  本来なら今すぐ参加を取り止めたい気分だが、昨日、バスタオルに包まれた空間で俺は決めた。  この暗い土のトンネルを脱してしまおうと。  彼女をつくる。    それが俺の人生が変わるきっかけになると思った。
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