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決断のとき
その日は
六丁目の未亡人宅に往診を
頼まれ
足立くんを連れて
診療時間後に向かった
症状を聴いたかぎりでは
ウイルスの可能性が高く
まだ人に試していないが
ワクチンを一応カバンに
しのばせている
未亡人宅は
町外れにある広大な土地に建つ
豪勢な邸宅だ
呼び鈴を鳴らすと
通いの老婆が出てきた
老婆の話をききながら
未亡人の部屋に歩いていく
意識がなく
寝込んでいるようだ
この状態だと
助からないかもしれない
なら
ワクチンを試してみる
価値はあるのではないか
ワクチンが効けば助かるのだから
足立くんは気付いていない
大丈夫だ
いつものアンプルと似たモノに
容れたから
私は
ドキドキしながら
未亡人に
ワクチンを射った
注射器の液体を
全部射ち終えた
暫くすると
未亡人の紅い斑点が
引いてきた
成功か?
成功なのか?
喜びかけたとき
未亡人は
目をクワッと開き
側にいた
足立くんを掴み
吐血した
そのまま
未亡人は還らぬ人となった
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