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思いつめたように、相変わらず下を向きながら、覚悟を決めたように少年は話した。
「お姉さんに、お母さんが入院している病院に行くまでの道、教えてもらったから。僕、頭悪いから、覚えられなくて、何度も、何度も、教えてもらったから。お姉さんに助けてもらうと心が温かくなって、ぎゅっとなったんだ。果物のこと、わからないけど、お姉さんと話したくて。それで、何度も行って、ごめんなさい」
私は少年の言葉をじっと聞いていた。頑張って話してくれていること、真剣に話してくれていることが嬉しかった。
私は背中をポンと優しく叩いた。
「謝ることなんてないよ。顔を上げて、背筋伸ばして!」
私は優しい口調で、気持ちを汲むように話した。
「お姉さんも苺を渡したのは、君と話したかったからなんだよ。だから、話そうよ。ね!」
その言葉を聞いて、少年が屈託のない澄んだ笑顔で頷いた。
私は少年に渡したバスケットの苺を見る。
「この苺、私と二人で食べようね。嫌いでも食べていたらおいしくなるかも」
私がいじわるな笑顔を向けると、少年は苺のヘタを摘んで、一粒を口に入れた。
「少し酸っぱいけど、とても甘くて、おいしい!」
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