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「今、ちょうどてっぺんだね」  森嶋は細く白い腕を上げ、窓の外を指差した。 「あの黒いとこ、森なの。あそこに私、埋められてるんだ」  抑揚のない声に、ゾッと鳥肌が立つ。彼女が示す方へ目を向けても、雨に白くけぶる景色に暗い一帯がぼんやり見えるだけだ。 「なん、で……?」  聞きたくはなかったが、沈黙に耐える方がつらい。すると森嶋は当時を思い出すように真顔で森を見つめてから、悲しげに笑った。 「楽しい話じゃないから、教えてあげない」  埋められてる、ということは、事故や自殺ではないのだろう。つまり、誰かに……?  二十年前、クラスの誰も、学校も、森嶋がいじめられていたことを警察に話さなかった。俺と友人は彼女の行き先と服装を知っていたのに、もちろん黙っていた。もしかしたら彼女を救い出せたかもしれない重要な手掛かりを、俺たちは結託して握り潰したんだ。 「楽しい話じゃないと言えばね、あれ、見える? 向こうに煙」  彼女は森の反対側、俺の家のある方向を指差した。雨の線に遮られはっきりしないが、白い靄の向こうに暗灰色の帯が見える。 「あれ、笹口君の住んでる団地よ。今、火事になってるの。笹口君、朝までお酒飲んでお部屋で寝てたでしょう?」
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