106人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は驚いて窓に貼りついた。煙の下に目を凝らすが、建物や位置を把握できるほどよくは見えない。
「私たちがあと半周する頃には、鎮火すると思うよ」
悠長な言葉に一瞬苛立ち、そして、ハッとした。
俺は実体ごとここにいる。さっき森嶋はそう言った。それはつまり、泥酔して部屋で寝ていた俺を、彼女が救い出してくれたということだろうか。
「俺を、助けてくれたのか……?」
信じられない思いでそう聞くと、森嶋はにっこり微笑んだ。
「私、笹口君が好きだったから」
最初のコメントを投稿しよう!