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海が凪いでいたので祥吾は甲板に座り、ワインを口の中で転がして飲んだ。チーズを口に入れる。留美が言った。
「ダイビングが出来るようにウエットスーツもあるんだって。でも飲んでるから駄目だよね」
「ああ、そうだな。一泊して酔いが醒めたらダイビングしてみよう」
数時間後に祥吾は空を見た。黒い雲が立ち込め始めている。一雨来そうだ。風も強くなってきた。モータークルーザーがぐらぐら揺れている。留美はボトルに一杯分残ったワインをグラスに注ぐと「夕立ちかな」と言った。
海は荒れた。土田は必死に運転していたが轟轟と吹く雨風にどうにもならなくなった。祥吾と留美は救命胴衣をつけた。モータークルーザーが波に飲まれたのは空が怪しくなって一時間後だった。
気が付くと、砂浜に打ち上げられていた。嵐は過ぎ去ったようだ。砂浜にはモータークルーザーも壊れているだろうが横にあった。祥吾は月明かりの中いる場所を確認しようとした。千葉の海岸だったら助けもすぐに来てくれるだろう。
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