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正直にいえば、聞いてそのあまりな内容に唖然とした。
「深く関わらない方がいい。彼女に気が行ってしまったらどうするんだ」
そう言ったけど、冴木の気持ちは変わらなかった。
「大丈夫、もうそんなことに浮つくような歳じゃないし。とにかく彼女を助けてあげてほしい。彼女には頼れる人がいないから」
その願いが冴木らしい、とも。そう思えて私は、望み通りにしようと決意した。
冴木は本当にいい奴だ。
一人で抱えていた秘密を私に最初に話してくれた、私の誇れる親友だ。
冴木のためなら、私は何でもしてやろう。必要ならばどんな悪役でも構わない。本気でそう思っている。
再びチャイムが鳴って、バラバラと生徒たちが階段を下りてきた。
今週は放課後に、三年生の進路懇談があると聞いた。クラスを探すフリをして案内図を見る私を、懇談に来た父兄の一人だと思って誰も不審に思わない。
「こんにちはぁ!」
行儀のいい挨拶をしながら、私の後ろをすり抜けて行く。
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