26 訪問者

4/5

175人が本棚に入れています
本棚に追加
/280ページ
「私は弁護士だ、法律に従って考える。  誰の味方でもない、ただボスのため、全力を尽くすのみ。ええ、ちゃんと働いていますよ、関係者みんなが平穏に暮らせるようにとね。  引っ越しも、目立つなというのも、表沙汰にしないため、ひいては二条河内のため」 「——ポンコツ弁護士」  低い声で、ハッキリと言ってやったら彼は目を剥いた。 「法律に照らして線を引くくらいなら、誰でもできる! その人に寄り添って、救うために法律の知識を駆使するのが仕事じゃないの⁉︎ そんなことも分からないならポンコツでしょ!  大和は私の大切な友だちなんだから! 私は法律がどうでも大和の味方だから!」 「ポンコツ……」  笑いをこらえた声に振り向くと、大和が立っていた。 「辰巳さん、もういいでしょ? 部外者は学校立ち入り禁止なんだけど。  彼女は俺の大事な友だちなんで、何もかも知ってていいんだ。俺にも一人くらい、話し相手がいてもいいでしょ」 「今更どうしようもない。しっかりと口止めしておくことですね」  苦笑いをしてすれ違いざま、弁護士は大和に囁いた。 「いい『友だち』だね。友だちは、大切に」
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

175人が本棚に入れています
本棚に追加