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取り残された私たちを、気まずい空気が取り巻いた。大和と口をきくの、何日ぶりだろう。
「……大和、いつからいた?」
「けっこう前。支倉が野次馬って罵られてる頃から」
「えっ、じゃああの人、大和がいるの分かっててあんなこと言ってたの?」
「そういう奴なんだ」
なんて大人なの! まぁ何にしても、それなら説明が省ける。
「ごめんなさい。勝手に調べて、私たぶん大和のお父さんが誰だか分かった」
「冴木裕哉っていう国会議員」
やっぱり……。
「いいんだ。俺、支倉には言おうかなって、何度も思ったんだ。でも、わざわざ言い出すのも変だし、……プライドもあって、ズルズル来てた。カバン持って来てくれた時、言うべきだったんだ。支倉は何も知らないのに、あんな八つ当たりみたいなことしてごめん」
部活は休むから一緒に帰ろうという大和を、下駄箱のところで待った。
いろんなことがありすぎて、私は失恋の痛みを超越した。もういい。
大和のことが好きだけど、きっとこの気持ちは今、彼には重いだけ。『秘密を打ち明けられる大事な友だち』で十分だ。
いつかそういう時が来たら、「あの時はね」って笑って話したい。私はずっと、仲の良い友だちでいられたらいい。
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