夜逃げ転校生

27 帰り道

　辰巳は冴木の駒だけど、俺たちのためを思って立ち回ってるってのもたぶん本当だと思う。
『冷静になりなさい。日本は法治国家です。
　もしも大和くんの存在が世間にバレるようなことになれば、冴木議員はあらゆる手段を使って保身に走りますよ。千歳さんが、冴木議員に妻子がいると知りながら、勝手に子どもを産んだのは事実です。法を守らなかった者に厳しい措置を取るのは簡単なことですよ。大人しく言うことを聞く方が利口です』

　こう言われては、夜逃げのように引っ越すしかなかった。

「俺はカッコつけだからさ。
　学校では今まで通りに振る舞って楽しく過ごしてても、家に帰るとネクラな奴で。俺は親から存在を否定されるような人間なんだ、それなら何で生まれてきちゃったんだろうってウジウジ考えちゃうんだ。
　それを誰にも言えなくて、必死で現実から目を逸らしてんの。ポンコツなんだよ」

　ダサい自分を晒すのは勇気がいった。まして、支倉に見せるのは。
　だけど逆に、支倉にだけは見せたいと思った。もう二度と、誤解させたり傷つけたりしたくなくて。