銀蛇

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あおいは、来週結婚する。 その式のプランニングを、今、かしやと行っている。 婚約者のかしやは、大手企業に就職しているエリートだ。 あおいとは正反対の性格で、律儀で、冒険心が強い。 何度も、かしやがたてたプランでデートに行ったが、 どんなに楽しくても同じ場所にはほとんど向かわない。 もちろん、あおいが行きたいといえば、きちんと連れて行ってくれるし、 とても優しい自慢の恋人だった。 自分にはもったいない、と何度思ったことか。 かしやに比べて、あおいは優柔不断で、どちらかというとパッとしない。 友達もそんなに多くないし、些細なことですぐに悩んでしまう。 一度だけ、かしやにこんなことを言った。 「かしやは、その...本当に自分なんかでいいん、デスか?」 かしやは半ばキレ気味に 「当たり前じゃんっっっ!!!あおいだから、一緒にいたいんだよ!?」 と、言ってくれた。 すごくうれしくて、その日はかしやの大好きな料理を、 予定よりもたくさん作ってしまった。 かしやは大喜びで平らげてくれた。 少し高い酒で乾杯して、二人で夜を満喫した。 深夜、かしやのふわふわなベッドの上で さらさらとうねる月の光にまどろんでいた時だ。 「・・・だめ、あおい可愛すぎる。 ほんとはもっとムードあるところで渡したかったんだけど、これ」 かしやは照れながら青い箱をあおいにつきだした。 ドキドキしながら見ると、中には、 銀の細い指輪を咥えた銀蛇がすうすうと息を立てて見ていた。 「うわぁ...っ!!?」 なんで、、、? こんな、こんなことするなんて… 「……すっごくうれしい・・・!! 銀の蛇なんて、実物初めて見たよ!!」 うっとりと。感嘆がほう、と漏れる。 銀蛇が咥える指輪も、蛇がかたどられていた。 「ふふ、そうだろう?生き物が好きなあおいのために探したんだ。 ...どう、かな?」 「もちろんオーケーだよ…! こんなに素敵なプロポーズはみたことも聞いたこともないよ…!!! こちらこそよろしく、です!!」 「~~~っっ!!!やっっっったあーーー!!!!」 ぴょんぴょんとベッドの上ではねるかしや。 ふふ、かわいいなあ。 かしやにこんなに喜んでもらえるなんて、 自分は幸せ者だなあ。 こんなプロポーズを自分なんかのために思い浮かべるなんて、 なんて冒険心あふれる優しい恋人…いや、婚約者なんだろう。 「わたし、夢を見ているみたいだな、…」 「僕もだよ、」 あおい、大好き…、とさらりとかしやに髪をなでられる。 くすぐったくも、大好きな細くしなやかな指。 「君みたいな人が僕なんかのになってくれるなんてね」
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