4話 ブラック盗賊団

1/1
前へ
/100ページ
次へ

4話 ブラック盗賊団

 フィーナを村に送り届けた。  彼女の父親が、こちらに向き直る。 「君がフィーナを送り届けてくれたのだな。礼を言う。俺は父のダインだ」 「俺はリキヤだ。なに、大したことじゃないさ。ところで、こいつらはどうするんだ?」  俺は、引きずって連れてきた賊どもを前に出す。  ダインが賊どもを見る。 「……むっ。こいつらは、確か指名手配されていたブラック盗賊団の構成員だ。村長を呼んできて確認してもらおう」  彼は、そう言って村の奥に去っていった。  そして少しして、1人の老人を連れて戻ってきた。  彼が村長らしい。 「ほっほ。確かに、こやつらはブラック盗賊団の構成員のようじゃ。街まで首を持っていけば報奨金が出るぞ。できれば、生きたまま連れていったほうがいいがの。奴隷として売り払えるからの」  村長がそう言う。  何やら手元の紙と賊たちの顔を交互に見ている。  指名手配犯の似顔絵でも描かれているのだろうか。    それにしても、盗賊団? 首を持っていく? 奴隷?  なかなか物騒な話だ。  ここは、いったいどこなんだ?  まさか、神隠しにでも遭ったか。  日本ではないのかもしれない。  フィーナたちの顔立ちや服装は、あまり見慣れないものだ。  かといって、外国というわけでもないだろう。  日本語が通じているからな。  夢、幻覚、神隠し、ゲームの中へ迷い込んだ。  可能性としてはどれも考えられるが……。  よくわからんな。  とりあえず、”神隠しで地球とは異なる不可思議な世界に迷い込んだ”という認識にしておこう。  ムリに急いで日本に戻る必要もない。  どうせ、最強を目指す戦いも行き詰まっていたところだ。  この不可思議な世界なら、地球とは異なった刺激や技術、経験などが得られるかもしれない。 「奴隷か。街へ行く機会があれば、そこで売り払うことにしよう。とりあえず、数日はこの村に滞在させてもらって構わないか?」  急いで街に向かう必要もあるまい。  もう少し状況を整理しておきたい。  この世界の常識とかな。 「ああ、構わないとも。君は村の恩人じゃ。我らの村からも、何度も盗賊団の被害が出ておったからな。これで少しは安心して暮らしていけるじゃろう」 「少しは安心? まだ完全には安心できないのか?」 「まだ頭領や他の構成員たちは健在じゃからのう。安心はできん」  なるほどな。  俺が撃破したのは、頭領や副頭領ではない構成員だった。  頭を潰さないと、こういう組織はなかなか活動を停止しないものだ。  かつて俺は、こういう違法組織を片っ端から潰して回ったことがある。  最強を目指すためのいい鍛錬になったものだ。 「なるほど……。よし、俺に任せてくれ。俺がブラック盗賊団とやらを一掃してやるよ」  この奇妙な世界の盗賊団が、どの程度の強さを持っているのかは知らない。  先ほどの構成員程度であれば、まったく問題なく討伐できる。  もっと強いやつがいたとしても、それはそれで大歓迎だ。  俺の最強への道の糧となるのだから。 「き、君1人で行く気か!? 無謀じゃ。頭領は相当な手練と聞く。それに、他の構成員たちだって20人は下らん。多勢に無勢じゃ!」  俺の言葉を受けて、村長が必死の形相でそう言う。  確かに、普通はそうか。 「問題ない。俺は強いぞ。なあ? フィーナ」 「た、確かに、とんでもないお強さでした。ですが……」 「なあに。俺が戻らなければ、それまでの男だったということさ」  俺はそう言う。 「き、君の覚悟はわかった。とりあえず、数日は様子を見てくれんか? 村の者たちで、手伝える者がいないか募集をかける」 「ふむ。手伝いなど要らんが……。まあいいだろう」  この世界について、状況を整理しておきたいところだしな。  数日ぐらいは問題ない。  そんな感じで、俺がしばらくこの村に滞在することが確定した。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

253人が本棚に入れています
本棚に追加