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悪霊
占いなどというものを生業にしてから、普段触れることのないような依頼を受けることが多くなった。
最初は物珍しさから出会うもの全てに前のめりになったものだが、回数を重ねるにつれマニュアル化され、トラブルシューティングが確立されていく。
失せ物、探し人、恋愛、学業、事業方針なんでもござれだ。
漠然的な未来というものはご遠慮しているが、必然的に広範な知識が求められ、学生時代より勉強しているようなきがする。
しかし、こと”怪奇”となるとそうもいかない。
そこに交差する事象は複雑に絡み合い、多次元宇宙であり、カルボナーラとナポリタンが混ざり合うスパゲティモンスターの様相を呈してくる。
まともに食えたものではない。
だが、占い師はそれを素知らぬ顔で咀嚼しなくてはならない。
かつて本邦には怪異を表す便利な手段として妖怪や鬼が存在していた。
が、まさにこれこそ抽象化、記号化することで怪異に一定の説明を与え、人々に安息をもたらしてきたれっきとした歴史がある。
しかし、彼ら妖怪は今は姿を消してしまった。
神隠しは行方不明事件となり、憑きものは精神病棟に隔離される。世の中が明快になった分、すこし優しくなくなった……と笹川は思っている。
最近、インターネットの動画配信サイトで心霊怪奇番組が流行っているそうだ。
今度の依頼もまた。
怪奇と呼ばれるものなんだろうか。
続く
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