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「なぁ、相生。木崎の匂い──」
「あなたも気づいたんですか。──ええ、やはり強くなっていますよ。抑制剤をきちんと服用しているようなので、変化は僅かですし、長く一緒にいる私でないと気づかない程度ですが」
そう言って相生ははあ、とため息をつく。
「相手はあの会長ですか……。いつかはこんな日が来ると思ってましたが、ここで来るとは」
「俺も同感。これから、俺らも、木崎も大変になるな」
そう言って木崎を見ると、彼は発表に勤しんでいた。あんなにここに来る前は噛みまくってたのに、今はすらすらと話していて、会長の座を射止めたことだけあるな、と感心する。
改めて相生の方を向き、相生に聞こえるように呟く。
「あの同盟を復活させる時が来たか〜」
「あまり気は進みませんけど、仕方ないですね。あの鈍感さんには必要不可欠です。──メンバー増やしますか?」
「まあそうした方が安心じゃん。それに話しやすいし」
「睦月君には貴方から話してくださいよ」
「おっけい。じゃあまた後で話そ」
ナイスタイミングで木崎達が帰ってきた。発表の緊張から解放されてか、すっかりやり切った表情をしている木崎を遠目に見ながら、俺は思った──
──友達のためにいっちょ頑張りますか、と。
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