5.交流会前半戦

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5.交流会前半戦

 この交流会は、姉妹校である両校の親睦を深めること、生徒会活動をより活性化させることを目的として、今から15年ほど前に始まった伝統行事である。九陽学園は小等部からの持ち上がりの生徒が多いため、天陽と交流することでより開かれて学校にしよう、という学校法人側の思惑、言わば九陽の生徒改革の為に始まったものではある。しかし、天陽の生徒会に言わせてみれば、どうしても閉鎖的になりがちな活動に新たな視点を取り入れられる、という側面もあり、結果的には両校ウィンウィンの関係を築けているのだ。  交流会は、いよいよ本題である意見交換会に入っていた。これは、先程のプレゼンを元に、相手校の生徒会活動について深掘りしたいことを聞いたり、両校が直面している課題に沿って設定された議題について話し合うものである。話し合いを深めるため、ここからは両校混合の3チームに分かれて行われるのだが…… 「九陽の2年書記、好井(いい)灯馬(とうま)です」 「天陽の2年、生徒会長の木崎緒斗です」 「九陽の2年生徒会長、深畝無花果です。宜しく」 「同じく九陽の書記1年、内藤(ないとう)由香子(ゆかこ)です」 というように、見事なまでにとぼっちになってしまった。今日はくじ運が少々弱すぎた。その上、九陽の生徒会メンバーは皆αの空気を纏っていて、嗅覚の方から刺激されるのもあり、若干の威圧感を感じる。しかしそんなものを気にしている暇は僕にはないのだ。何故ならば──。 「早速ですが、九陽の方に質問があります。ここに書かれている行事なのですが──」  何故ならば、僕、木崎緒斗はこの日を誰よりも心待ちにしていたからだ。だって他校の生徒会運営の内情を知れる機会なんて滅多にない。だからこそ、この交流会への参加が、現在のマンネリ化した天陽の生徒会を変えるきっかけになると、僕は確信していた。
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