5.交流会前半戦

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  張り切りすぎて、質問したいことなんて山ほどある。目安箱の活用の仕方なんてその最たる例だ。要望は大量に来るものの、そのうちの半分ほどは備品交換について、残りのほとんどは個人的な日頃の不満が寄せられていて(受け付けてないのに!)、実際に生徒会として動ける案件は少ないのだ。  それは一旦置いておくとして、教室を入ってからずっとしているこの柑橘系の匂いの元凶は、どうやら九陽(ここ)の生徒会長であるようなのだ。──やはり社交会で生きる者のたしなみ、なのであろうか? この場所自体、多くの御子息御令嬢達が通う学校である。会長がその一人であってもおかしくないのだが……。何故だろう、何故か僕はこの匂いの主を放ってはおけないのだ。同じ生徒を引っ張っていく立場にいる者として、なのだろうか。風紀はやはり、生徒会長が1番に守っておかなければいけないと思うのだ。  「この行事のことですか? これはですね──」と深畝は物腰穏やかに僕の疑問に答える。そこにはα特有の威圧感がないことに僕は気付き、驚いた。そういえば、αの中には自分の匂いを消す為に香水をつける人もいると聞く。Ωにとってそれはただの苦行となす場合もあるからだ(僕もそう)。彼はそういった類の人間なのか、はたまた単にファッションなんかの一環であるのか──などと考えながら質疑応答や話し合いをしているうちに、もう昼休憩の時間が来てしまった。昼を挟んだ後は、与えられた議題についての話し合いの継続(ちなみに議題は目安箱の運営方法についてだった。気が利いている)、そして話し合った内容を他班にプレゼンする。プレゼンやその準備を円滑に行う為にはこの昼時で仲を深めておくことが重要になってくると僕は踏み、弁当を取りに行く深畝の横に並んで声をかけた。
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