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2.出発進行!
それはよく晴れた夏休みの、ある1日のことだった。
「もー! 会長ー! 早くしないと遅れますよ、交流会!」
「ったく。木崎がしっかりしてないでどうすんだよ。……で、今度は何探してんの?」
書記の相生和歌と副会長の斎江脩にそう急かされ、僕は焦る。
「んー、ごめんごめん。確かこの辺に去年の文化祭の資料があったはずなんだけど──。あっ。あったあった」
「はい、じゃあ会長この紙袋に入れて下さい。……流石にもう大丈夫ですよね?」
「ちょっと待って。まだ不安」
「おいおい、何回この茶番繰り広げるつもりかよ。もう3回目だぞ。俺らが仏様でいられるのはもう終わりだ。──他校になんて初めて行くしその気持ちはわかるけどさ。まあ木崎ならなんか忘れてても機転利かせてどーにかできるだけの頭はあるわけだし。っていうことでもう行くぞー」
「ああっ! ちょっと待て置いていくな!」
と叫び、生徒会室から出て行った2人の背中を追いかけた。
──ここは天陽高等学校。県内で1、2を争う私立の共学進学校だ。僕、木崎緒斗は昨年Ωでありながらも晴れてこの学校に入学し、その年の9月には生徒会長に選ばれた。生徒会役員の任期は半年なので7月後半の今は2年生にして2期目を務めている。ちょっと口が悪いが根は優しい副会長の斎江と、しっかり者で同級生なのにいまだに敬語を使ってくる書記の相生とは、1期目からのよしみだ。
そして──。
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