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「先輩方遅いですよー! 10分って言ってたのに倍の時間かかってますよ。こんな暑い中かわいい後輩をどんだけ待たせたと思っているんですか! ──まあ原因は会長でしょうけど」
「あんまり先輩達のことを悪く言いたくはないんですけど、こればかりは俺も東谷と同意見です……」
そう、昇降口で待っていた1年生で会計の東谷茉莉と同じく1年で庶務の睦月弥生にまで非難の言葉を浴びせられ
「マジですまなかった! ごめん!」
と頭を下げた。屋内とは言いつつも外から熱風が流れ込む場所なので、二人の額には汗が滲んでいた。これはもう自分の悪しき性格と徹底的に向き合うしかない。なんで僕は……。このままではいけないのに……。
「って言いつつも、皆本気でそう思ってるんじゃないからな、木崎。なんかみるみるうちに顔が萎んでいってるぞ。1年組がむしろ本当のことを主張した自分たちが悪いみたいな顔してるからやめろ、その顔。お前がこういうところまで完璧になったらそりゃあ怖いもの無しって感じだろうけどさ。おーい。木崎ー?
──姫会長〜?」
揶揄うように斎江が言う。それを聞いた3人の顔からはさっと血の気が引き、怯え上がり、東谷に至っては半分涙目だ。そんな外野を他所に、僕は思わず殺気立ち、ドスの効いた声で
「──斎江? 今、なんて言ったか?」
と発すれば、当の斎江はぎゃははと笑い、
「よし、木崎のどんより顔も晴れたことだし、そろそろ出発するかー」
なんてあっけらかんと言う。こんな芸当はやはり斎江にしかできないだろうな、と僕はフッと笑い怒りを収めて斎江の後を追い、それを見た3人もホッと胸を撫で下ろしてその後に続いた。
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