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僕らの通う天陽高校と姉妹校である九陽学園高等部は年に1回、毎年7月に交流会を開いている。天陽からは電車で片道30分。うちの高校とは違い、市の中心部にある。
「九陽って確か小等部からあるんですよね? 会長」
緒斗のせいで駅まで軽く走ることになった上(なにせ中心部から離れているので逃せば30分後だ)、いいように東谷に言いくるめられて、電車の4人掛けのボックス席に座れないまま軽く汗を流している弥生が緒斗に問う。
「ああ。九陽学園は学校法人曙学園が今から124年前の4月に初めて設立した学校だ。詳しい歴史の説明は省くけど、高等部から始まって、今では小等部から大学・大学院まで揃う由緒ある学校だよ」
「やっと本調子戻ってきたじゃん」と隣に座る斎江はケタケタ笑う。
「そうですよね。ここの辺りでは一番の名門校ですもの」
向かいに座る相生は車窓を虚ろげに眺めながら「会長に何もなければいいんですけどね」と小さく呟いた。
この世の中には男女の性の他に3つ、α、β、Ωの3つの性がある。人口の大半はβだが、知能や身体能力が比較的高いと言われるαは人口の10%ほど、さらに少ない5%ほどがΩであり、Ωのそれらはどの種よりも低い。そして、男性とαの女性は妊娠させることが、女性とΩの男性は妊娠することできる。Ωは3ヶ月に一回、1週間ほどヒートと呼ばれる発情期が来、αにしかわからないフェロモンを撒き散らし、αを誘惑する。この為、長らくΩは差別対象で身分も低かったのだが、Ωのフェロモンを抑える抑制剤が開発され浸透してきたことで、社会的な差別は──オメガ・ハラスメントという言葉ができるくらいには──なくなったとされている。
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