2.出発進行!

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 第一その容姿からして男女問わず目に毒なのだ。まず、キメの整った白い肌。見るからにすべすべで触り心地は抜群だろう。けれど、決して華奢ではない。身長168センチと小柄な方でありながらも、幼少期から柔道を、中学からは剣道をしているというその体は、必要なところにはしっかりと筋肉がついている。そして、涼やかな目元に茶色い瞳。光に透けて輝くその目を見て美しいと思わない人はまずいない。また、髪の毛はクセがなく黒くしなやか。寝癖なんてついたことがないんじゃないかと思うくらい、さらさらとしている。その上成績優秀だ。αの和歌と脩と成績で並べるのはΩの緒斗しかいない。世間一般には、Ωは華奢で、儚くて、誰かに守られなきゃ生きていけない存在だというイメージが強いのだが、緒斗はむしろその逆。あのマイペースさを除いて考えれば、αと間違えてしまうくらいだ。無論、和歌と脩の間にいることが1番普通なことだど誰しもが思うし、その可憐さからβからも一目置かれる存在であるのだから、少し皮肉めいているが──。こんなにも目立つΩを和歌は緒斗以外に見たことない。だからこそ余計に和歌のお母さん属性が働いてしまうのだった。 「──次は〜。九陽学園前。九陽学園前。お出口は──。」 いつからか今日のプレゼン資料の最終チェックに入っていた僕らの元に、車掌のアナウンスが到着を告げた。 「うわぁー。やっぱりいつ見てもデカいですね、この学校は。」 と、睦月が感嘆の声を上げる。車窓から見渡す限り見える看板にはどこも「九陽学園」の文字が入っていて、街全体が学園のものなのだ。 「あーこれ絶対迷うやつだ。木崎、道わかる?」 もちろんわかりますわ。こういう予習はちゃんとやる派だから。
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