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3.九陽学園へようこそ
電車から降りて歩くこと5分、似たような建物も多かったが予習の成果もあり、最短で高等部の校門まで辿り着いた。
「ここが正門で間違いないはずなんだけどなー」
「まだいませんね。九陽学園の方」
校舎内に勝手に立ち入る訳にはいかないので学園の生徒会の人が案内する手筈になっているのだが、まだ来ていない。丁度いい電車がなく、30分ほど早めに来てしまったためだろうか。
「にしても生徒数の割には広いですよね〜。流石九陽!って感じですね」
「睦月はさっきからデカいだの広いだの規模の話しか言ってなくねーか? もうちょっと他にもあるだろ、他校の感想」
「えぇー。他ですか〜? ……なんか凄そう、とか?」
何だそれ、と内心ツッコミを入れる。要は外装が凝ってるとでも言いたいんだろうけれど。4階建でなおかつ黒を基調としたその校舎は、重厚感が漂う。
「じゃあそういう先輩こそお手本見せてくださいよ! 俺に文句言うんじゃなくて!」
「上にドームあるし天文部とかあるんだろうな、とか、運動場人工芝だし金かけてんな、とか?」
「俺より全然マシだ……。」
「まあ一応は副会長だしね~」
斎江はケラケラと笑う。そうなのだ、肩あたりまで伸びた赤毛を一括りにしている見た目と口調がそのことを忘れさせるのだが、あいつはれっきとした副会長である。なんと言っても周りをしっかり見ていてフォローが抜群に上手い。僕自身もその見た目から本当に務まるのだろうかと就任当初は不安だったが、1日共に過ごしただけでそれは吹っ飛んだくらいだ。
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