終わりに

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「だってどんだけ聖女の異能を使っても、リチャード乱れないし」 「好きな女の子の前ではカッコつけてたいじゃん」 「え?」  思わず身を乗り出すと、彼はにっこりと笑って私の頬に手を添え、熱烈なキスをしてきた。 「ーーーーーーーー!!!!!!!」  唇を離して、彼はぺろりと濡れた唇を舐める。その目の獰猛な輝きに、私は騙された、と心で叫ぶ。  パーティのギャラリーが大歓声をあげ、ジョッキを掲げて皇弟殿下と妃のキスを祝福してくる。頭が真っ白になる。身体中の血がぐつぐつと滾って、体の中をめちゃくちゃに暴れてるみたいだ。  なにこれ、なに、これ。 「僕はしっかり紳士の皮を被り続けられてたってことだね。頑張って耐えてたんだよ?」 「な…な………」 「好きだよ、モニカさん♡」  彼は立ち上がり、私をひょいと抱え上げる。 「お! 殿下が聖女様を抱え上げたぞ!」 「ヒュー!」 「おっしあわせにー!」  みんなが囃し立てる。私は顔が熱くなる。恥ずかしいけれど離してほしくない。軽々と抱き抱えられてパーティ会場から悠々と奥の休憩室に連れて行かれるのが、夢のような気持ちだ。 「ねえ、モニカさんすごくドキドキしてない?」 「……言わないで」  こんなのもう、だめだ。聖女としてありえない。  ああもう、だめ。誰か早く、私を発情聖女と罵倒して。
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