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「認めたな! 非処女の癖して私の妃になろうとするなんて言語道断! 婚約破棄だ!」
「お待ちください。私は騎士団の皆様にしっかりと守られておりました。彼らがそのような過ちを許すはずがありません」
「うるさい! 私はわかる、その声は明らかに男を知った声だ! 汚らわしい!」
ざわざわと場がざわつく。
全体的に、王太子殿下の酷い物言いに引いている人が大多数だが、同時に私を庇ってくれる人こそいない。
なぜならばここにいるのは王侯貴族だけで、平民は私だけ。聖女としての功績を認められ、1時間ほど前に公爵家と養子縁組のサインを交わし、承認を得ただけの存在だ。
彼ら彼女らの視線は、
「確かに王太子殿下は無茶苦茶なことを言ってるけど、平民だしなあ……」
「平民に王妃になられるくらいなら、王太子殿下に同意しておいた方がマシだわ」
という空気一色だ。辛い。
そんなパーティで着飾った貴族たちの中、ニタニタと汚い笑みを浮かべている猫背の男と目が合った。
歯も磨いてない唇がニチャァと開いて、私に「ざ・ま・あ・み・ろ」と告げる。
こいつか〜。
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