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そして日曜日の当日がやってきた。天気は快晴。天を仰げばそこには青い空、白い雲、身体を伝い過ぎていく風が清々しく心地よい。そして透明感のある風の香りがした。何だか新しい門出を祝うよでもあった。
「なんか、らしくないどメイクとかしちゃったっし」
そう、初めて行くお店だって事もあったし、少しは女らしくして行こうかなぁってね。エリカも言ってたじゃない、いつ何処でイケメンと遭遇するかわからないから。でね、わざわざメイク用品を新調しちゃったりしている。まぁ新調とは言ってもプチプラコスメだけどね。
『どうしたナツ、お一人様上等はどこいった! こんな時に女見せて何がしたい?』
って、天の声が聞こえた気がした。「気にするな、ほっとけ!」 と、天に向けて右手の中指を立てる自分がいる。
織田に貰った名刺の裏側に書かれた住所を確認し、自分の家から一番近い普段から通学で使っているバス停に向かう途中、何処か見覚えのある住所がずっと気になっていた。スマホに指示されるがまま目的地のバス停で降りた時、やっと気になっていたモヤモヤが解消された。それはまるで目の前を遮っていた靄がスッと晴れた感じ。もっと例えるならカメラのファインダーを覗き、ピントが決まった時のように気持ちが良かった。一眼レフのカメラなんかは持ってない。多分、ピントが合うとはそんな感じなんだろう、気持ちが良いということを伝えたいだけなんだけども。
「へッ!? 学園前。ですよねぇ……」
見覚えがある住所、それは番地は違えど、地名までが一緒の学園と同じ住所だった。勝手知ったる見覚えのあるバス停でバスを降り、そこからは徒歩で向かう事となった。学園に向かう方向とは逆に進めとスマホの地図アプリが矢印を向けている。普段であればこの交差点を右折して学園の校門を目指すが、この地図アプリは左折した先、すぐそこ数百メートル先を右へ、そしてさらに数十メートル先の右折した所をゴールとしていた。
「あッ、あった。『coffee & bike shop ~ Mahal kita. ~』」
まだ先に見えるその建物は近づくにつれ、徐々にそれが喫茶店だという事がわかった。その建物には数人が外で飲食のできるテラス席があり、入り口の扉は茶色の壁とは相反し水色なの。ネットの写真で見かけるヨーロッパにありそうな可愛らしい佇まいの建物が『ちょこん』と、そこにはあった。
テラスの前にはさもその場所が定位置だと言わんばかりに風景に溶け込むバイクが一台置かれていた。
「フュージョンだッ!」
そこにはあの後ろ姿のシルエットに特徴のある純白の『HONDA フュージョン』がある。その白色は何色にも染まり決して邪魔する事なくヨーロッパ調の建物の一部と化し、まるで絵画に見るそれに似たものだった。
建物の前で立ち止まり、深呼吸して扉の取っ手に手を掛けようとした瞬間、
「あら、お客さまですか? いっらいしゃいませ」
「──きゃッ!!」
そう後ろから声を掛けられ、驚きのあまり悲鳴に似た声を漏らしてしましった。私の後ろには品の良いお姉さまふうの女性が立っていた。可愛い人……
「あ、ハイ、お客さまです」
まぁ自分でお客さまと言う奴も居ないと思うが、とっさの答えがそれだった。
「アユムの友達かしら? 最近、女の子が訪ねて来るのよね…… 所でアユムの彼女?」
「ち、違います。クラスメイトです」
ビックリするから…… 断じて彼女ではありません。といいますか、お姫様抱っこはしていただきましたが、それが何か。
「さぁ、どうぞ、ここのレモネード美味しいわよ」
そう言ってお姉さまふうの女性がお店の扉のドアノブに手を掛けた。
『カラ~ン、コロ~ン』
店の扉に付いたドアベルが優しい音色を奏で、私の来訪を歓迎してくれているかのように思えた。
「いらっしゃいませぇ」
「──えッ!? 嘘でしょ」
なによこのドキドキ感、どうした私の心臓! 落ち着けって……
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