1人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
.2話 少女マンガのような出会い
家路に向かうバスの中、アイツの事が気になって仕方がなかった。そもそも登場の仕方がどうなのよ? 少女マンガにありがちな出会い頭にぶつかって、見たいなの。普通に考えて、一目惚れするヒロインが、自分とは不釣り合いの彼への思いを押し殺し、好きへの思いが頂点を迎えた時、最後の最後に告ってハッピーエンドって事でしょぅ、ないない。私から告るとかあり得ない。中二の夏休みのあの出来事が鮮明に蘇ってきた。
「和哉君って、彼女とかいないの?」
「うん、いないよ」
「私と付き合ってもらえないかな?」
「ナツのこと嫌いじゃないけど……まずは友達からね」
彼の私に対する最大の優しさだったんだよ。考えに考え抜いた言葉、『友達から』。それから夏休みが終わる頃には和哉君は隣のクラスのエリカと付き合ってた。ここから私の人見知りゲージはMAXになり、人間不信を併発し『お一人様最高! お一人様で何が悪い』と心を歪ませていく。
そんな嫌な思いが頭の中を巡っていた時、ふとバスの窓から見下ろした先に小さなスクーターが横をすり抜けて行った。──ピンク色のナンバープレート。バイクのナンバープレートって色んな色があるって事を初めて知った。ピンクいナンバー可愛い。
家についてからはアイツの言葉が頭から離れなくなっていた。ご飯を食べながらの家族だんらんの時、お風呂に入っているとき、忘れようと思えば思うほど、気になって仕方がないんだよ。ベッドの上でSNSのチェックや推しの動画を見ていても何か落ち着かない。気づけばスマホの画面に向かって『ビックスクーター』の文字を入力し、検索していた。
「へぇー、こんな大っきいスクーターがあるんだ」
思わず言葉を漏らした。次から次へと検索でヒットした画像を見ては感心するばかりだった。その画像にあるビックスクータのナンバープレートは私の知っている少し小さめの物ではなく、大きな白色だった。アイツ、どんなビックスクーターに乗ってるんだろ? 私は背が小っさいから大っきいのは無理だとか、免許もないのに妄想だけが膨らんでいた。
あれか数日が過ぎたけどアイツから声を掛けられることはなかった。
「チッ! やっぱからかわれたんだ!」
ついつい言葉に出してみたけど、物凄く小さな蚊の鳴くようなものだった。こういう乙女心をもて遊ぶ輩は絶対に許さん! とは裏腹に、その時には何故か自分の衝動を抑えることが出来ず、出席番号からあいつの名前を調べ上げていた。『織田歩夢』お前だけは許さん! 殺す、そう神に誓った。
最初のコメントを投稿しよう!