.3話 最大のライバル現る

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.3話 最大のライバル現る

「ナ~ツちゃん。あッ! いたいた」  うわッ! 最悪だ。いつものヤツだよ、この登場の時は嫌な予感しかしないのだけども。 隣のクラスから不敵な笑みを浮かべ私の席までスキップをしながら近寄ってくる。 「ねぇ、バイクの免許取るんだって?」 「まだ、いいなーて思っているだけだけど……」 「そう、ナツは運動神経悪いから小さいのにしておきなね、私は自動二輪取るけどね」  ほらほら始まった。この女こそ私の黒歴史には欠かすことのできない幼馴染の”大小路エリカ(おおこおじえりか)”なのだ。中二の夏休みの出来事が鮮明に蘇ってきた。 「ナツって和哉君と付き合ってないんだよね?」 「う、うん……」 「じゃぁ私付き合うね。良かったよ親友から彼氏取ったらゲスじゃん!」  私は知っている。そもそも私が和哉君に気がある事を知ってて私より先に和哉君にアプローチしてただろ。そんなんだから告ったって断られるに決まってるじゃんか。だいたい私なんかより頭だっていいしスタイルだっていい、何より男ウケする『私って可愛いでしょう』オーラ出し過ぎだよ。それに比べて私はといえば、ちょっと背は小っさいし、ちょっとポッチャリだし、愛嬌だって皆無だし、男免疫ないから……。何故に同じ高校を選んだ、もはや悪意でしかないな。  それだけじゃない、いつだってそうだよ、幼稚園の年中さんの時だって、 「ナツちゃんのリカちゃん可愛い、私のはもっと可愛いから交換してあげるね」  って言って私からのお気に入りのリカちゃん人形を取り上げた。結局のところ和哉君もそうなのよ。私の持ってる物が欲しいだけなんでしょ? で、今度は何が欲しいわけ? 免許もバイクも私は持ってませんからね。 「ところでさぁ、織田歩夢って知ってる?」  んッ!? 知らんことはないが私とはまったく関係ないけど……。 「彼女とかいるか聞いといてよ、友達なんでしょう? てか付き合ってるとか?」 「な、ないない、そもそも知り合いじゃないよ」 「そうなの? こないだ階段のところで楽しそうに話してったて友達から聞いたけど」  織田歩夢とバイクと免許。ほ、ほぅ、そういう事か! 見破ったぞ、この女、何か勘違いしているようだ。今回に限っては私とは全く関係ないし、好きに自分の物にするが良い。 「歩夢ってさぁ、バイク乗っててさ、後ろに乗せてもらうのもいいけど、一緒にツーリングとか行けたらいいじゃん。」  はて? 『歩夢』…… あら? 呼び捨て、もう彼女気取りですか、どうでも良いけどね。そもそもバイクの話だって何故にエリカが知っているのだ? ──!? お前という奴は既に織田歩夢にアプローチ済みか! それがお前のやり方か!! といいますか、織田も織田だ。 あれ以来、一切、話しかける事もなく、何より天敵のエリカに私の事を話すとは言語道断、けしからんのだよ。そう心の中で怒りを爆発し、眉間にシワを寄せ織田に視線を送る。 「へッ!? 睨んでる……」  私が視線を送った先の織田もこちらに視線を向け眉間にシワを寄せ、私を凝視していた。いやいや私の方が先でしょ、そう思い睨み返す。すると織田も更に眉間を力強く寄せ睨み返してきた。怖いから……、そんな思いで私は視線をそらしていた。 「ねぇねぇ歩夢、こっちにくるよ。今日の私、可愛いよね?」  ハイハイ、エリカ様はいつでも可愛いですよ、どうでも良いことだと呆れながら心のなかで呟いていた。 「これ、貸してやるよ。俺、もう使わないから」  机の上に置かれたそれは、原付免許を取得する為のテキストと過去問集だった。
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