32人が本棚に入れています
本棚に追加
「ももちゃん、ゴメンね。
動画配信の時間なのに、カメラ消して、とか言ってさ。
あと、お見舞いありがとー。
何かメチャクチャ頭が痛くて、今日はお店行くの無理って思った」
咳き込みながら述べられた猫乃みかんの言葉に、葵ももは
「いいよー。
みかんちゃんには、店でも動画でもプライベートでもいつも助けられてるんだからさ」
と、笑いながら答えた。
「取り敢えず、美味しいスープ作るね。
何か『料理のお兄さん』って人が動画で作ってたんだけど、凄く美味しかったし、しょうがも入ってるから風邪にも効くと思うの」
「ありがと」
猫乃みかんは再び咳き込むと、「ゴメン、ちょっとトイレに行ってくる」と付け加え、部屋から去っていく足音を動画の視聴者に聞かせた。
「じゃ、みかんちゃんが戻って来るまでの間、カメラを少しだけオンにします。
まずは、こうやって長ネギを洗って切っていきます」
蛇口から排出した水道水で、葵ももが長ネギを手洗いしていたその時、ガチャリと玄関のドアが解錠される音が聞こえてきた。
「誰か、来たみたい。
みかんちゃんの友達かな?」
説明口調で葵ももは言うと、洗い終えた長ネギを斜め切りにしていく。
「えっ?」
ココで、葵ももの声色が男の子のように低い声色となった。
「何で、ユキトくんがココにいるの?」
そして、葵ももはスマートフォンをキッチンに置いたまま、部屋に訪れた男に向かって歩み寄っていく。
最初のコメントを投稿しよう!