#3

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 取材当日、現れたライターは立花と名乗る女性だった。彼女は赤川の顔を見るなり、 「すみません、同行のカメラマンが、校内で迷ったみたいで……」  と、ぺこぺこと頭を下げた。赤川は笑顔を崩さなかったものの、内心閉口した。いい大人が迷子とは、どういうことか。 「まあ、広い校内ですから……私が探してみますので、ここでお待ちください」  赤川は立花を小会議室に残し、校内を探した。ここで見知らぬ大人は目立つ。すぐに見つかるだろうと思った。  だが、指定した校舎をくまなく回っても、それらしき姿は見つからなかった。外に出て、陸上部が練習に励むグラウンドや中庭を探しても見つからない。  ようやくその姿を見つけたのは、敷地の隅にある旧校舎だった。彼は校舎にカメラを向かってシャッターを切っていたので、すぐにそうと分かった。 「あの、」  呼びかける赤川の声は、無意識に尖っていた。迷っていると聞いたから探してみれば、呑気に写真を撮っているなんて――苛立ちで表情が引き攣りそうだった。 「カメラマンの方ですよね? こんなところで何を?」  旧校舎は撮影の予定がない。彼がこんなところで撮影をしている意味がわからなかった。 「ここって、面白い建物が多いですね。この校舎なんて、どこから見ても絵になる」  男は赤川の求めているものとは違う答えを返してきた。一眼レフを一瞬も離すことなく、またシャッターを切る。 「……こちらは、来年改修が決まってる校舎です。写真を撮っていただく必要はありません」 「そうなの? だったら、なおさら撮っておかなきゃ」  パシャリ――男が、またシャッターを切った。 「改修したら、もう今の姿は見られないんでしょ? それを残しておくために俺がいるんだから」  そう言って、男がカメラを下ろした瞬間――赤川は、「あっ!」と声を上げた。  そこにいたのは、夢の中の男だった。  
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