#8

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 青葉は赤川をベットにあげると、普段は撮影機材を入れているであろうバッグから縄の束を取り出した。 「緊縛師のスタジオで撮影することがあってさ、縛り方教えてもらってんの。簡単なのしか出来ないけど、いい腕だって言われてんだよ」  彼は赤川の両手首を縛ると万歳の形でヘッドボードに固定した。続いて、腰の下に枕を噛ませて尻を上げさせ、そのまま両膝に縄を巻きつける。そして、その端もベッドボードに結んだ。 「あ、――――」  完成した時、赤川は両足を大きく割り広げた状態で動けなくなっていた。  蜜にまみれた屹立も、プラグを咥え込んだ秘孔もすべてが目の前に晒されている。いまだかつてなく恥ずかしい姿を見下ろし、赤川は呆然とした。 (この体勢……お尻が、)  尻を突き出す形では、否応なく後ろに力が入ってしまう。加えて、あげた足に腹を圧迫され、中のローションが迫り出してくるようだった。堰き止めるプラグが飛び出してしまいそうな気がして、すぼみに力が入る。  落ち着きなく腰をもじつかせる赤川に、青葉はにやにやとおかしそうに笑った。 「苦しい?」 「あ、ん……も、出したい」  だんだん下痢をしているかのように、下腹部が苦しくなってきた。全身から汗が滲み出し、赤川の肢体を艶めかせていく。 「まだだめ。このまま俺ので中でかき回したら、最高に気持ちいいから」  そう言って、青葉はプラグを浅く抜き差しした。摩擦の快感と入口の圧迫感に襲われ、肉襞が蠢いた。 (ほしい……)  夢の中で何度も犯されたのに、期待はどんどん膨れ上がっていく。こんな刺激では物足りない。もっと奥まで、彼の獰猛な凶器で抉り抜いてほしかった。    赤川は潤んだ目で見下ろし、訴えた。 「あ、青葉さん、もう……」 「もう? 何?」  彼はそう言って、惚けたように首を傾げた。口元には、意地の悪い笑み。 「い、入れて、下さい……」 「何を、どこに入れるって? ちゃんとおねだりして。今日は初めて繋がるんだから」  初めてーーその言葉に、どくっと身体の奥が疼いた。  そうだ、今日が初めてなんだ。今まで本性を隠してきた赤川が、生まれて初めて誰かと繋がる日。彼に触れられた日。解放への期待がマグマのように湧き上がり、赤川の羞恥を取り払った。 「あ、青葉さんが、ほしい」  ぎし、と縄を軋ませ、赤川は訴えた。 「あ、お葉さんの、お、おちんちん、入れてください……中擦って、ぐちゃぐちゃにして!」  青葉はにたりと笑うと、衣服を全て取り払った。生で目にした裸体は、夢と違わず、肉食獣のような美しい形をしている。この肉体に存分に犯してもらえるのだと思うと、期待ではち切れそうだった。  くぷり、とアナルプラグが引き抜かれ、崩壊寸前の窄まりに熱い塊が押し当てられた。しとどに濡れたそこに、ぐっと圧がかかる。 「いくよ、先生……」  凶器の先端が、熟した柔肉に食い込んでくる。ぐぶぅううう――鈍い水音が、赤川の中で弾けた。 「あぐっ、あ、ああっ、ああぁ――」  大きく開いた口がわななき、固定された爪先が宙をかく。ぐぶぐぶと音を立てて侵入してくる肉塊が、熟れきった赤川の肉を擦った。強烈な快感が結合部から襲いかかり、赤川はただ圧倒されるしかなかった。 「あっ、あっ、あ……は、うぅ……」  初めてのはずなのに、おかしくなるほど気持ちいい――暴力的な快感に押し出されるように、どぷっ! と赤川のペニスが白濁を吐いた。甘い痺れは長く後を引き、開ききった内ももがぴくぴくとわなないた。 「は、あ……あぁ、」 「先生、入れられただけでイっちゃったの?」    青葉は、嬉しそうに目を見開いた。 「初めてでトコロテンとか、あんたエロすぎるよ」 「あ、うぅ……」 「そんなに、俺の美味しい?」  ぢゅぶ、ぐちゅっ、ぶちゅん――中に詰まったローションをかき回すように、青葉は腰を動かした。その卑猥な音と快感に、赤川は悶えて身をよじった。 「やっ、ああっ……、やあっ、あっ……」 「ほら、言って」 「あう、お、美味しい、です……」 「いい子だ」と言って、青葉は唇にキスを落とした。優しくいたわるようなキスに酔いしれる間もなく、ずむっ! と最奥を突き上げられた。 「んあっ! ああ……! ま、まだっ……んんっ!」  達した余韻で敏感になった媚肉に、ずんっずんっと剛直が打ち付けられる。中を擦り上げられるたびに肉がわななき、全身が快楽で蕩けていく。泡立ったローションは結合部にまとわりつき、尻まで溢れて枕をぐしょぐしょに濡らしていた。 「ああ、やぁあ、……お、お尻、きもちいい……」 「先生、やっとらしくなってきた」  青葉は、赤川の顎を掴んで前を向かせた。彼の瞳もまた欲望に濡れ、赤川の肉体に酔いしれていた。 「今のあんたは、夢の中と同じ顔してる。いいよ。すごく綺麗だ……」  汗だくの赤川の顔を、彼の手が拭った。きっと今の赤川の顔は、だらしなく弛緩し、涙とよだれにまみれ、これ以上なくひどい顔をしているだろう。  それなのに、彼は愛おしげに触れ、綺麗だと言ってくれる。醜い自分の本性が受け入れられたような気がして、なんだか泣いてしまいそうだった。 「現実で、あんたをこんなふうに抱くのが夢だった。すごく、嬉しい……」 「……ぼ、僕も、」    赤川は、ほろりと笑みをこぼした。 「あなたに、こうして欲しかった……とても、幸せです」  今この瞬間、自由だと感じる。  手足を縛られ、男に支配されていても、赤川は自由だった。  ずっと隠してきた自分を晒して、生きている―― 「んあ、ああっ……は、ああっ、あっ!」  青葉の腰使いが、激しさを増した。腰をわしづかみにされ、これでもかと揺すぶられる。 「ひゃ、ああっ、ああ……あ、青葉さん、青葉さん……」  荒れ狂う愉悦に絡め取られ、髪を振り乱しながら泣き叫ぶ。激しい後ろの快感に、赤川の物は再び勃ち上がり、しずくをまき散らしながら頭を振っていた。すさまじい射精感が見る間に膨れ上がり、追い詰められていく。 「くぅっ、うぅ……、あ、イっ、イっちゃう、ううぅ……」 「俺も……出すよ」  弱いところを激しく擦られ、とうとう限界まで上り詰めてしまった。  がくんっ! と背中がのけぞり、爪先が丸まった。その瞬間、津波のような浮遊感に襲われて、息が止まった。 「あ、あぁ……ああ、ぁ――――っ、つっ!」  後ろで青葉を食い締めながら、赤川は再び絶頂を極めた。白濁がとぷっ、と弾け、胸まで飛び散った。そして蠕動する肉筒を青葉の熱いものに満たされ、頭の芯が痺れて溶けていった。 「ふ、うぅ……う、うぅ」 「……先生、もう俺のものだ」  青葉は優しく微笑み、濡れた額にキスをした。  そこで赤川の意識は途切れた。  
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