四話 呪いの黒変固体種

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四話 呪いの黒変固体種

〜 レイバン 視点 〜 ここで会うことは誤算だったが、気分のいい回答だった為に問題はない。 裏路地から出れば、店の前で周りをキョロキョロしていた茜へと声を掛ける。 「 茜、お待たせ 」 「 レイ様!!トイレに戻るといらっしゃらないので心配しました!! 」 「 うっぐ…… 」 猫なのに犬のように駆け寄ってきて、一目気にせず抱き締めてくる様子に相変わらずだと思い背中に触れる。 落ち着かせるように軽く擦れば、彼は何度か髪に頬を擦り寄せてから身を離した。 「 無事で何よりです。それと、何かいいことでもありました? 」 「 嗚呼、ここの店員…ドレスコーディネーター?があの夜に会ったΩだったから、話していた 」 「 へ?さっきの、店員ですか? 」 「 違う違う。もっと長身でスーツぴっちり系。黒髪を掻き上げてるやつさ 」 いましたか?と疑問そうな彼は店の方を見た後に少し気になる様子。 兄として相手に挨拶でもしたいのか、その心此処にあらずの様子に笑みは溢れる。 「 少し見て来たら?まだ居るだろうし 」 「 あ、はい。遠くから見てきます。次は此処で待っていてくださいね 」 「 はいはい、行ってらっしゃい 」 やっぱり顔を見たいんだなと思って居れば、彼は私に畳んでいる日傘を差し出し、持たせてから中へと入った。 日差しが毒とでも言いたいのだろうけど、屋敷にいる時は日差しなんて気にせず日向ぼっこしてたのにな…と眩しい太陽を見上げて思う。 街と屋敷、何が違うんだろうかと疑問になっていればふっと視線の先に見える小さな人族の子供が気なる。 「 君、そんなに道路を見てたら危ないんじゃ… 」 まだ三歳も満たないような子供。 親は何処だろうと目線を泳がせば、それ等しき女は木陰で中身のないベビーカーを片手に、スマホを弄っていた。 「 ちょっ、子供から目を離すなよ 」 他の連中は、この子供を見てないのか?と疑問に思えば通行人の目には小さな子供なんて映りはしない。 全てが自分本位で歩いてるのだから、子供を気に掛けてるのは私以外はいなかった。 鉄パイプのガードレール、そんな隙間から身を乗り出した子供に目を見開き、信号機の方へと視線をやれば、青信号になった瞬間だった。 「 っ…!! 」 ハイハイのままガードレールを抜けた子供は、覚束ない脚で立ち上がりそのまま向こうの道にある縫いぐるを目掛けているように思えた。 触りたい、近くで見たい、子供にはそれしか見えてないのだろう。 「 御前、まだ居たのか…って……おい!! 」 神崎 竜久だっけ? 今、茜が店に入ったんだが御前はなんで裏路地から出て来てるんだと言いたかったが、そんな言葉は私には発せなかった。 店にいなかったとばかりに店内から出て来た茜の姿が視線の端で見えたが、私にはやっぱり真っ直ぐ、子供しか見えなかった。 大きなトラックが右から聞こえてくる音に只夢中で、子供に手を伸ばすしか出来ない。 「( 間にあって……くれ……!! )」 「 レイ様……?っ!! 」 何故走り出すのか、そう疑問そうな茜に答えてあげよう。 私にも、理由が分からない。 助ける必要のない赤の他人であり、干渉しない法律である人族の子供だ。 それでもスマホに集中してる親より、私は子供の世話ができると思うんだ。 「 なっ……ガキ!? 」 運転手が気付いた時には大きな急ブレーキとクラクションの音が鳴り響き、通行人の視線は道路へと向けられた。 「 っ……ハァー……間に、あった…… 」 「 あう……? 」 ヒラリと道路にドッキングワンピースや転がった靴 茜には申し訳無いと思うが、咥える事が間に合った子供に安堵しては反対側の通路に降り立っていた私は、尾を揺らしてゆっくりと口から子供を離し、地面に置く。 「 ふぇ…… 」 「 道路に出たら危ないだろ? 」 泣きそうな子供は私を見上げて涙が止まり、その顔へと鼻先を当てようとしたら、女の悲鳴が聞こえてきた。 「 キャーー!黒変固体種が、私の子を食べようとしてるわ!! 」 「 黒化の獣だ…… 」 「 呪われるぞ!! 」 「 食われる…子供が食われてしまう! 」 「 子供離せ!! 」 浴びせられる暴言、飛んでくる物に驚いて避けようとするも、子供に当たる事を考えては避ける事は出来なかった。 「 っ……! 」 「 うぁぁあっ…!! 」 物が飛んでる事に驚いた子供は泣き始め、私は慰めようにもぶつけられたジュースの缶やペットボトルに身体が当たれば、その場にいることが耐えられなくなった。 「 レイ様になにを…止めてください!! 」 「 おい!!止めろ!!そいつは子供を助けただけだろ!! 」 「 っ…… 」 「 レイ様!! 」 投げる大人達を止めようと道路を走って渡りながら来る茜や竜久の声なんて遠くに聞こえる程に、逃げる様にその場を走り去った。 「( 街に…出てくるんじゃ…無かった……!! )」 「 キャッ!!黒化の獣よ!! 」 「 こっちに来んな!! 」 何処に行っても叫ばれ、逃げた先では物を投げつけられ、私が何をしたと言うんだ……。 我武者羅に走って、息が切れ、横腹が傷んでも脚を止めることは無かった。 「( 体毛が…黒いだけじゃないか…… )」 他の獣と何が違う… 何故こんなに嫌われる必要がある? 分からない…… 分からない…………
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