二話 Ωとの出会い

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黒豹の部屋の前だったらしく、足裏に付いた砂を軽く払い落とした程度で畳の上へと上がった。 少し気になるが、気にしない様子の黒豹に何も言う事はなく、適当な場所に腰を下ろせと言われ、仕方無く敷布団を踏まないよう端の辺りに腰を下ろす。 「 救急箱…確かこの辺りに……あぁ、この姿は、取り辛いな 」 「( なっ……!? )」 黒豹は、俺がいるにも関わらずその姿を人型へと変えた。 雌だろう!?と文句を言い掛けたが、本人は気にせず背を向けたまま着物を掴み軽く羽織り、腰へと紐をやんわりと巻いては引き出しを開ける。 確かにその高さなら人型にならないと取れないだろうが、もう少し恥じらいはないのだろうかと視線を逸らす。 「 あった、ほら…やってやる 」 「 自分で出来る… 」 「 なわけ、後ろだから出来るわけ無いだろ 」 「 っ……( 胸が…見える… )」 小振りな桃のような胸が視界の端に見える事に戸惑い、良い歳して見ないようにするのも変だと内心思うが、今は平常心を保つ事に意識をする。 あの獣人に追われていたときよりΩの匂いが減っただろうが、それでも咬まれてしまうと身体に力は入る。 俺の事なんて知らず、黒豹の獣人は背に移動し後頭部の髪を寄せては傷口に消毒液を塗り、切り口に合わせた大きさにガーゼを切って貼れば包帯を巻いていく。 「( 胸が、背にあってる…… )」 そんな前に腕を回す必要あるかと思う程に密着する胸と背に身体の芯が熱くなる。 宝玉を触られたせいだと心の中で吐き捨てれば、手当が終わったように救急箱を片付ける音がする。 「 ほら、終わった。有難く思え… 」 「 嗚呼…手間を掛けさせて 」 救急箱の箱を閉じた黒豹は、俺にも聞こえる程にスンッと鼻を鳴らした。 その音に、頭の中で警戒音が鳴り響く。 「 御前、まさか…発情してる、Ωか? 」 「 っ!!( 不味い……! )」 手当てされず早く立ち去れば良かったと後悔した時には、既に雌とは思えない力で背中を押され身体の上半身を敷布団の上へと倒れていた。 「 いっ、ッ…! 」 背骨が軋むような程に押さえつけられ、痛みで鈍い声を漏らせば頬に当たる水気と密かな唸り声に視線を後ろへと向ければ、そこには半獣であり、獣人らしい姿をした黒豹が唾液を垂らし唸っていた。 「 !! 」 「 私は…Ωが、嫌いなんだ…。匂いで誘い、種を欲するしか能無い…連中が… 」 「 おま、え…アル、ファ…か…! 」 「 嗚呼…そうだ。グルル…… 」 α…だから、逃げるような抵抗が本能的に出来なかったのだと知る。 遠慮しても良かったはずなのに、何も言えなくなった。 そして、この屋敷から離れて行ったβの発言で気づけば良かった。 この屋敷に住む者の中にαがいることを……。 理性と本能が交差するように、αの黒豹は唸りながら一向に襲っては来ない。 唾液を垂らす割には奥歯を噛み締め堪えてる様な様子を見ると、我慢はしてくれてるのだろう。 だが、この状況ですら俺の欲は掻き立てられる。 これが、αを前にしたΩの特性か…。 「 嫌い、だと……俺の方が言ってやりたい…。こっちは、好き…好んで…発情なんかしたくねぇよ…。だがな…本能が…疼くんだ…… 」 十四年…地上に馴染んで人族として生きてきたはずなのに、本物のαを目の前にしてこんなにも胎内が擽られてるような感覚になるとは思わなかった。 薬を取ろうにもこの状況じゃ、飲んでも効果が出るのは遅いだろ。 「 だから、なんだ…。その胸糞悪い鬱陶しい、匂いを消せ! 」 「 そんなにこの匂いが嫌なら…さっさと、そのぶら下がった雄を突っ込めばいいだろ! 」 「 あ? 」 「 俺だってな…。俺だって、Ωになんて、言われたくねぇよ…… 」 竜族には関係無い性別を、この地上に降りて思い知らされた。 様々な匂いで些細に興奮して、その度に薬の量を増やして飲んで、発情期に入る度に仕事が疎かになるほど記憶が曖昧になる。 よくバレなかったと褒めたいぐらいに、情けなく体調を崩していた。 「 御前等…αは、突っ込むだけだろうが…こっちは…… 」 下手したら身篭る…。 その言葉は喉で詰まり言う事は出来なかったが、黒豹は俺の言葉なんて知る由もないよう肩へと噛み付いて来た。 「 いっ!!? 」 「 首に…咬まないだけ、有難く思え…… 」 確かにうなじではないが…と思うが、痛いのには変わらない。 皮膚が突き破れたんじゃ無いかと思う程の痛みに肩は熱く焼けたような痛みを帯びる。 その一方で、獣人は片手を動かしスーツのズボンのベルトの金属部分を起用に外し、釦を取りファスナーが下がる。 やけに耳に届く犯される前の準備音に痛みより思考が下半身へと行く。 「 っ、やめ……! 」 否定も虚しくズボンと尻が露わにされれば、肩から口を離した黒豹は片手で俺の腹へと手を滑らせ腰を浮かすようにさせれば、濡れた窪みへとザラついた舌を当ててきた。 「 ッ〜!?なっ、なっ、ァ、ッ! 」 ジルルッと卑劣な水音が立ち、愛蜜が垂れる後孔を吸われる感覚に腰は震え、嫌でも甘い声が漏れる。 この年で、見る限り年下の獣人に犯され、喘ぎたくはない為にスーツの袖を噛み、快楽で声を出さないようにする。 「 ッ〜!!ンンッ、グッ…!! 」 猫科のザラついた分厚い舌が、丁寧に孔を舐め、其処に雄を埋める準備をしてるのが分かる。 腹部を刺激され、嫌でも掻き立てられる本能と性欲に、このαの子種が欲しいと胎内は訴えるように押し込められた舌を喜んで受け入れ、吸い付く。 それを知って、黒豹もまた興奮したように熱い鼻息を尻へと当てるから腰は揺れ、早く、早くっと気持ちとは裏腹に誘う。 「 あ、もう…いいから…早く、終わらせてくれ…… 」 こんな醜態を晒すなら、さっさと犯されたいと望めば腰辺りに毛並み触れるのが分かり背中に重みを感じる。 顔を横に向け視線を背へと向ければ、黒豹の欲に溺れた金色の目が俺の視線と重なり合い、押し当てられた熱い雄が尻穴に当たれば、一気に埋められた。 「 っ〜!! 」 突かれた瞬間に射精し、達してしまえば強い快楽に生理的な涙は目元に溜まる。 熱く太い肉棒が胎内を擦り上げ、背骨側を擦る度に甘い声は漏れ、唇は震える。 屈辱的な雌のような態勢なのに、今はそれすら考えられなくなっていく。 「 あ゙ぁっ、ッ!あっ、ンッ!! 」 「 はっ、グッ…… 」
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