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秋重は袋の口を開けて中を覗き込み、そのまま片手を突っ込んだ。彼とて警戒心がないわけではないだろうに。それよりも好奇心のほうが勝ったようだ。
「卵だ」
彼の手によって袋の中から取り出されたのは、確かに卵のように見えた。
不思議な光沢を持つ白い卵だ。底の一部が平らになっているため、カウンターの上に置かれても転がることなく自立している。
大きさは鶏卵とほぼ同じで、真ん中辺りに上下を分かつ細い溝がぐるりと入っていた。後ろには蝶番がついているから、上下にぱかりと開くようになっているのだろう。
本物の卵ではなく、卵の形をしたケース。大きさやデザインからして、指輪などのアクセサリーが入っているもののように思えた。
「何でこんなもの、うちの前に捨てていったんだ?」
ひとまず危険物ではなさそうだと判断し、佐貴は卵の形をしたケースを手にとってみた。
実際の鶏卵よりも少し軽い。軽く揺すってみても特に何の音もしない。
中身を確認しようと思ったが、ケースは開かなかった。
「ん?」
佐貴は小首を傾げ、卵の外側を観察する。
鍵などない、至ってシンプルな構造のものである。なのになぜか、ケースの蓋はびくともしない。
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