11. 祝福の餞

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 ふと、手の中にじんわりと温かさを感じた。  両手に包んだ卵形のケース。自分の体温が伝わってそう感じただけかもしれない。けれど佐貴には、飛野が励ましてくれているように感じられた。  ――相棒なんだろ? だったら頑張って『不辛』にしてやれよ。  そう言われているかのように。 「だな」  応え、佐貴はぎゅっと不辛の卵を握りしめる。そしてそれを、カウンターの上に戻した。  まずは、演奏を終えるアーネストのために紅茶を淹れてやろう。コーヒーを飲みたがったのはたぶん、飛野に合わせてのことだろうから。 《リーベル》のマスターとして、自分がやるべきこと。一番得意なこと。  彼のために、とびきりおいしい紅茶を淹れてやるのだ。
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