ぼくは、ぽとりと落ちて

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 眠れない晩には、星空を仰ぐ。  地球から3000光年と少し離れたところに浮かぶ惑星、ティリッジ。  その風景も住む人も、地球にだいぶ似ていて、少し違う。  この星の、小さな港町に夜が来た。 「今夜も星がポンターロのために歌いますように」 「星が歌いますように。パパ、ママ」  いつものように寝る前のお祈りの言葉を交わして、ポンターロは自分の寝床に入った。  スフで編まれたシーツは柔らかく、チュアットルの毛を織り込んだ青の毛布はふわりと軽い。  彼はごそごそと毛布の掛け具合を調節して、三つの目を閉じた。  ポンターロがこの地上に転がり落ちてから――パパやママは時々そういう言い方をする――12回目の秋の初め、窓を開けなくても涼しい夜が続いている。  階下からひっそりとした両親の話し声がする以外は、窓を揺らす風もなく、しんとした空気に部屋は止まっている。いつもならこんな日は、すぐに頭の中に「夢の世話人」がやってきて、あっという間にポンターロを眠りの世界へと引っ張り込む。  けれど今夜、ポンターロは、三つの目を順番に開けた。  眠れない。  しばらくもぞもぞと右を向いたり左を向いたり、お腹の上で四本の手を組んでみたり、毛布のしわを伸ばしてみたりしたが、眠ろうとすればするほど目は冴え、世話人は遠くへ去っていく。  代わりに、寝床に入るまでは姿をひそめていたものたちが、頭の中にそろりと顔を出し、ぽとりと落ち、じわりと広がる。  ポンターロは、ふう、と大きく息をついた。  ついさっき見た、回覧板のおそろしい絵のせいだ。
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