Short Story1. 打算

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 優馬が向かった先は保健室だった。 ドアを開けて中へ入ると、保険医はいない。 たまにここでサボって寝ている生徒もいるが、今日は誰もいなかった。 「何考えてるんだ、」  優馬は少し怒ったような顔をして、ぐいっと心の腕を引いてベッドの上に座らせた。 「だって、」  言い返そうとして、心は口を噤む。 「何だよ」 「……なんでもない」 「Say(セイ)(言え)」  面倒そうな口調で発令されたCommandに、心はびくりと肩をすくめた。 「……大橋に会うのに、他に方法ないじゃん、」  まるで、優馬に会いたかったのだというように聞こえた自分の答えに、心は居たたまれない気持ちになってうつむいた。 「そうかよ、」  ばかにされて笑われるかと思ったが、優馬は一言だけ短くつぶやくと、心の頭に手を置いた。 悔しいことに、そうやって触れられると安心してしまって、自然と強張っていた体がほぐれてゆく。
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