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優馬が向かった先は保健室だった。
ドアを開けて中へ入ると、保険医はいない。
たまにここでサボって寝ている生徒もいるが、今日は誰もいなかった。
「何考えてるんだ、」
優馬は少し怒ったような顔をして、ぐいっと心の腕を引いてベッドの上に座らせた。
「だって、」
言い返そうとして、心は口を噤む。
「何だよ」
「……なんでもない」
「Say(言え)」
面倒そうな口調で発令されたCommandに、心はびくりと肩をすくめた。
「……大橋に会うのに、他に方法ないじゃん、」
まるで、優馬に会いたかったのだというように聞こえた自分の答えに、心は居たたまれない気持ちになってうつむいた。
「そうかよ、」
ばかにされて笑われるかと思ったが、優馬は一言だけ短くつぶやくと、心の頭に手を置いた。
悔しいことに、そうやって触れられると安心してしまって、自然と強張っていた体がほぐれてゆく。
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