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 丸三日が明けると怪我もだいたい治って平熱に戻った。  学校へ行った心は、午前中の授業を適当に受けて、昼休みのチャイムが鳴ると教室を出て購買に向かった。  自販機で買ったいちご牛乳を持って建設科のクラスへ行くと、優馬は自分の机に顔を伏せて眠っていた。 いたずら心が芽生えて、優馬の頭の上にいちご牛乳のパックをぽんとのせてみた。  香川が所属している機械科と、優馬が所属している建設科は、伝統的にも実際的にも犬猿の仲だ。  優馬はクラスの誰ともつるまず一匹狼状態だが、二年の建設科は富樫(とがし)という男が仕切っている。 そして富樫と香川は一触触発だった。 優馬のところへ来ているうちは、香川に絡まれる可能性は低いと心は目論んでいた。  優馬がぴくりと動いた拍子に、安定感なく置かれていたいちご牛乳が転がる。 心はそれを受け止めた。  おもむろに顔をあげた優馬は、心を見ると、ひどく迷惑をうな顔をした。 「……なんだよ、」 「誘いにきた」 「おれはNeutralだって言っただろ。Domのやつ誘えよ、」 「いや、どう見てもDomだけど」 「人を見た目で判断するな、」 「まぁ、それはそうだけどさー……、大橋、ぜったいGlare出てたよ、」 「出てない」  優馬はきっぱりと言い切って、心の手からいちご牛乳をぶん取ってストローをさした。  心はその様子を見て一瞬目を丸めたが、すぐに、ぷっと吹き出した。
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