1.

7/10
前へ
/77ページ
次へ
 中学二年のとき、一方的に浴びせられたGlareと、合意なく発動されたCommandによって動けなくなった心は、内蔵が損傷するほど殴られて、けっこう大きな手術を受けた。 若かったので術後の治りは早かったが、退院したとき、心の両親は離婚していた。 Sub性でもともと情緒不安定だった母親は、心が大怪我をしたことでとうとう精神がもたなくなったらしい。  父親はDom寄りだがGlareも弱くて、SubのCareがあまり上手くできない人だった。  親権について特に揉めることもなく、心は父親に引き取られた。 心が高校へ進学する時期に父親は再婚したが、今度の相手の女性はDom性で、心よりふたつ年下の、Dom性の男の子を連れていた。 ダイナミクス性が不安定な時期のDomの子どもが、Subの心に何をしたのかということも、心の体にとってどういう環境が毒になるのかということも、心の実父はまったく理解していなかった。  その頃、心は家に帰ると義弟のGlareにあてられ、軽いDrop状態を繰り返していて、しょっちゅう香川のところへ避難していた。 香川の両親は共働きで日中はほとんど家にいなかったし、完璧な放任主義で心が来ていても無関心だったので、居心地が良かった。  今年中学三年にあがった義弟は、Glareのコントロールはずいぶんマシになったが、最近は心に向かってCommandを使うという遊びを覚えてしまっていた。 しかしAfter Careをしないので、もともと欲求が強い心は家に帰るたびに具合が悪くなる。 応急処置的に抑制剤を飲んでも、いったんCommandに従わされたSubの本能は、またDomを求める。 ひどい悪循環だった。 そのうち、もう何をされてもいいから、とにかくDomに褒めてもらいたいという欲求に全身が支配されて、まともな思考さえできなくなってゆく。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

263人が本棚に入れています
本棚に追加